ある個人が保険に加入したとする。そのことは、その個人がもつ事故を避けようとするインセンティブを減少させる。このことをモラルハザードという。このときリスクとインセンティブのトレードオフの原理が成り立つ。たとえば発生する損失を保険会社が全て負担すると仮定した場合、リスクゼロの顧客は損失を回避しようとするインセンティブを完全に喪失することが考えられる。これに対して企業家は、その負担するリスクに対して保険をかけることができない。そのため、そのリスク(不確実性)に見合うだけのリターン(報酬)を企業家は必要とする。このインセンティブとリスクの原理は、所得分配の平等がリスクの減少を伴うため、インセンティブと平等の問題とも関連している。
所得分配の平等は、一般にはインセンティブを減少させ、経済全体のアウトプット(産出量)を減少させる。これをインセンティブ・平等のトレードオフという。たとえば限界効用逓減の法則に基づく功利主義では所得再分配を肯定するが、所得の完全平等は否定される。これはインセンティブの減少による経済全体のアウトプットの減少を避けるためである。
ある経済主体の活動がほかの経済主体に市場を通さずに与える影響を外部性という。たとえば企業の発生させた公害のような負の外部性に対しては、課税(ピグー税)によって負のインセンティブを与えることで、市場メカニズムを活用して外部性を解消することは内部化という。
警察や消防などの、正の外部性を有するが排除性は有しない公共財(これに準じるものには情報財がある)は、人々にフリーライダーになろうとするインセンティブを与える。その結果、当該の財の供給が過少となるという問題が発生する。そこで政府の徴収する租税によって公共サービスとしてこれを供給する。
所有者が自由にその財産を使ったり売ることのできる所有権は、その所有者に自己の 財産を維持・管理するインセンティブ(利潤動機)を与える。これに対して公共部門では、このようなインセンティブは機能しない。そのため、たとえば公営住宅の管理者は、民間の住宅の所有者と同等のインセンティブは持たないものと考えられる。
共有の放牧地などの
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を有しないが競合性は有するコモンプール財は、その望ましい量を超えて利用するインセンティブを人々に与える。そこで、たとえば放牧地を分割してその所有権を人々に与えることで、私的財となった放牧地は、過剰な利用から守られることになる。
需要と供給のバランスした均衡の下では、市場の参加者が自分の行動を変化させるインセンティブは存在しない。これに対して、たとえば需要と供給の調整の過程における価格の変化は、それを知った人々に対して需要量と供給量を変化させるインセンティブを与える。たとえば超過需要の下での価格の上昇は、需要量の減少と供給量の増大とをもたらすことになる。
市場における競争は、それに直面する企業に対して効率性を高める
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を与える。これに対して価格決定権の獲得に伴って生じる独占利潤は、競争を回避するインセンティブを企業に与える。このとき、競争下におけるより高い価格でより少ない量が供給されることになる。他方では、参入障壁を上回る価格の引き上げにより、独占状態は競争に転化する。これは、独占利潤が新規参入のインセンティブをもたらすことによる。公営企業は、少なくとも競争に直面しない場合には、民間企業に比べて非効率になるものと考えられる。ただし民間企業においても、ことに大企業にあっては、公営企業と同様の官僚主義の問題が存在する。
市場を支配している少数の寡占企業がカルテルを締結していたとする。個々の寡占企業は、自社だけ がカルテルを破ることによって、より高い利潤を得ることが可能である。そのため、合理的な経済主体としての寡占企業は、他社を裏切るインセンティブをもつ。そこで仮にすべての寡占企業が他社を裏切るほどに合理的(利己的)であれば、各社の利潤はかえって最小となる。
「モラル・ハザード」は
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は保険業界で使われていた用語で、保険によって保険事故が補償されることが、被保険者のリスク回避行動を阻害するという現象を指す。この場合の例としては以下が挙げられる。
自動車保険において、保険によって交通事故の損害が補償されることにより、加入者の注意が散漫になり、かえって事故の発生確率が高まる場合。
金融において、セーフティネットの存在により、金融機関の経営者、株主や預金者等が、経営や資産運用等における自己規律を失う場合。
医療保険において、診察料の多くが保険で支払われるために、加入者が健康維持の注意を怠って、かえって病気にかかりやすくなる場合。
医療保険において、受診の際の自己負担が軽いために、加入者がちょっとした病気でも診察を受けてしまう場合。
「火災保険をかけたために、注意義務を怠り、結果として火事のリスクが高まる」などのリスク回避を疎かにする事をモラール・ハザード(morale hazard)、「火災保険をかけておいて放火する」などの意図的に事故を起こす事をモラル・ハザード(moral hazard)と分ける場合もある。
特に、保険金詐取を目的として故意に惹起される事故をモラル・リスク(moral risk)と言い分ける。 保険金詐欺行為は刑法246条の詐欺罪に該当する犯罪行為である。
また、社会主義国で見られるような努力しても努力しなくても生活水準に変化や差があまり生じないので全体が怠けていくことの例えにも用いられる。
2008年のサブプライムショックを緩和するため、アメリカ政府が金融機関に公的資金を投入しようとした時に、「モラルハザードが発生する」との理由で反対意見が出た事もある。
この語を翻訳する際、直訳されたため「道徳的危険」と訳された。その際、よく用いられる保険の例えで、保険に加入して自らが火災を起こす事を保険金詐欺と捉え、節度を失った利益追求と誤った解釈がなされた。
情報の非対称を元に、プリンシパルがエージェントに不利益になる条件を与える方のモラルハザードは、社会や他者を考慮しない自己利益のみの追求と説明されたため、当たり前の経済活動を指す結果になってしまった。
「モラル」の「ハザード」、つまり「
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・道徳観の欠如・崩壊・空洞化」という用法は当初誤用として一部の識者が指摘していたが(「給食費を払わない親が増えたのは近年のモラルハザードによるものだ」等)、2003年11月13日、国立国語研究所による『第二回「外来語」言い換え提案』によって、モラルハザードは「倫理崩壊」「倫理欠如」「倫理の欠如」とする見解が示された。
ただし、本来「モラル・ハザード」という語は保険におけるリスク関連、および経済学の国際的な専門用語であり、この言葉が日本語圏においてのみ「倫理の欠如」という本来とは異なる概念で定着することはビジネスや国際コミュニケーションにおいて意思疎通の障害になり、利益を損なうという意見がある。
宣伝(せんでん)とは、企業や商店などが、自分たちが提供する商品やサービスを、その特長も含めて一般大衆に知ってもらおうとする活動の事。プロモーション (promotion) とも言う。広義にはキャンペーンや試食販売などの販売促進活動も含む。
特に放送や新聞、雑誌などのマスメディアを利用したり、鉄道駅、鉄道車両、バスといった交通機関の施設など、何らかのメディアを利用して行う宣伝を「広告」ともいう。(その方法は広告を参照)
転じて、自分の自慢を周囲に言いふらして回る事や、見た目でその人がどんな人か分かるような格好や言動をする事も宣伝という。
宣伝とは、元々はプロパガンダの訳語であったが、昭和初期に商業目的の宣伝部が作られた企業が登場した。戦後にはもっぱら商業宣伝の略として使われている。このため、書籍や会話等ではどちらの意味で使用しているか留意が必要な場合がある。
特定の商品やサービスについて、虚偽あるいは大げさな内容をうたい、実際よりも優秀・優良であるかのように見せる宣伝手法のことを過大宣伝(かだいせんでん)あるいは誇大宣伝(こだいせんでん)などという。広告の場合は、過大広告あるいは誇大広告という。
このような宣伝行為は、健全かつ公正な競争を
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できないばかりか、消費者の誤認を招き被害が発生する恐れがあるため、多くの場合(特に商行為)において不当表示(あるいはそれに順ずる行為)として禁じられている。日本における根拠法としては不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)が挙げられ、他にも宅地建物取引業法第32条、特定商取引に関する法律第12条、薬事法第66条などにて、誇大広告等につき禁止する旨の規定が設けられている。